前回は障がいのある子どもたちを取り巻く環境の変遷と、そこから見えてくる「アダプテッド体育・スポーツ」の重要性について述べてきましたが、今回はもう少し具体的に、子どもたちの体育・スポーツ実施を取り巻く状況や、「アダプテッド」の視点を加味した指導・支援のポイントについて考えていきたいと思います。
スポーツ庁が毎年実施している「全国体力・運動能力、運動習慣等調査」によれば、現在の子どもたちの体力・運動能力の結果をその親世代である30年前の体格・体力・運動能力等と比較すると、身長・体重については子ども世代が上回っているものの、体力・運動能力については多くの測定項目で子ども世代が下回っており、長期的にみると「体は大きくなっているものの、身体能力は全般的に低下しつつある」といえます。
その主な原因としては、学校外での学習活動の増加や室内での遊び時間の増加、さらに少子化による各種クラブ活動の縮小等による運動・外遊びの機会の減少などが挙げられます。また、近年注目されているのが、子どもたちのスクリーンタイム(テレビ、スマートフォン、ゲーム機器等の画面の視聴時間)の増加です。先に示したスポーツ庁の調査によると、子どもたちの平日の学習時間以外のスクリーンタイムは、小学生・中学生ともに増加している一方で、体育授業を除いた定期的な運動の時間が減少してきています。
令和7年度調査の「運動やスポーツをすることは好き」の項目をみていくと、「好き」と回答したのは、小学生男子72.8%、小学生女子54.1%、中学生男子66.0%、中学生女子43.0%となっており、男女別では女子の「好き」の割合が相対的に低いと同時に、男女ともに中学生では「好き」と回答する割合が低下しており、経年でみていくと、女子の「好き」の割合が少しずつ減っています。
また、「体育・保健体育の授業は楽しい」という項目では、「楽しい」と回答したのは、小学生男子73.7%、小学生女子57.0%、中学生男子56.5%、中学生女子38.2%となっており、「運動やスポーツをすることは好き」の項目と同様の傾向が見られます。
文部科学省が2022年に行った調査では、小学校・中学校の通常学級で、知的発達に遅れはないものの、学習面(「聞く」、「話す」、「読む」、「書く」、「計算する」等)や行動面(「不注意」、「多動性」、「衝動性」等)で著しい困難を示す児童・生徒は8.8%在籍しているとされています。
*通級指導:通常学級に在籍している障がいのある児童・生徒に対して、大部分の授業を通常学級で行いながら、一部の授業については、障がいに応じた指導を通級指導教室で行う指導形態。
令和2〜5年度の数値は、3月31日を基準とし、通年で通級による指導を実施した児童生徒数について調査。
その他の年度の児童生徒数は年度5月1日現在。(文部科学省「令和5年度通級による指導実施状況調査」より作成)
以上の課題、環境の調整を視野に入れながら動機づけし、そこに個人の特性を加味していくことで、よりよい指導、支援が可能となっていくのではないでしょうか。
その日の活動について、具体的なスケジュールを文字としてホワイトボード等に提示しておくと見通しが持ちやすくなります。また、活動の全体の流れや準備運動等について、ある程度ルーティン化しておくことで安心して活動に取り組むことができます。
「ここまで走りましょう」、「こうやって○○します」といった表現を使ってしまうと、活動に対する理解が深まらず子どもたちが混乱してしまう可能性があります。カラーコーンやマーカーコーン等を設置してゴールを明確にすることや、動作を細分化して明確に言語化することが重要です。
まずは、子どもたちそれぞれの障がいの有無や身体的特性、運動発達の状況等を適切に把握したうえで、適度な課題設定を行うことが重要です。また、発達障がい、特に自閉スペクトラム症傾向のある子どもたちは、こだわりの強さが特性としてみられる場合がありますが、個々の興味・関心を見極めて、特性を活かしたルール設定や用具選定、環境調整等が必要となります。
運動スキルを習得する際に、障がいのある子どもたちや運動が苦手な子どもたちに対して、課題を細分化したうえで段階的に提示し、小さな「できた」という経験を積み重ねていくことで、主体的に運動に取り組んでもらえるようになるかもしれません。
- 日本レクリエーション協会 子どもの体力向上ホームページ「子どもの体力の今」
- スポーツ庁(2025)「令和7年度全国体力・運動能力、運動習慣等調査結果の概要」
- スポーツ庁(2025)「令和7年度全国体力・運動能力、運動習慣等調査結果の総括」
- 文部科学省(2022)「通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査結果について」
- 文部科学省(2025)「令和5年度通級による指導実施状況調査」
- 澤江幸則「第20構 まとめ アダプテッドに必要なことは?」齊藤まゆみ(編著)(2018)「教養としてのアダプテッド体育・スポーツ学」大修館書店 pp.84-88























