教科書いまむかし
教科書紹介 中学校理科編
2昭和33年(1958年)
学習指導要領系統的な学習の重視
戦後、生活単元学習が定着しましたが、この教育のスタイルでは科学の知識があまり深まらないといった反面もあり、しだいに学力低下が問題になりました。そのため、昭和33年に学習指導要領の教育課程の基準としての性格が明確になって全面的に改訂されると、道徳の時間が新設され、基礎学力の充実や科学技術の向上などが図られ、「系統的な学習」が重視されるようになりました。
このときの改訂によって、おもに物理と化学の内容を取り上げる第1分野と、生物と地学の内容を取り上げる第2分野の2分野制が導入され、中学校の理科の授業時間は各学年週4時間となりました。
大日本図書では、昭和37年に『中学校理科』『中学校理科の世界』を発行しました。『中学校理科の世界』は、理科研究中国地方委員会、四国理科教育協議会、理科研究九州地区委員会によるもので、地域性を生かした編集がされています。
ここでは、その昭和37年版『中学校理科』を紹介します。
国立教育政策研究所
「学習指導要領データベース」
昭和37年(1962年)版 中学校理科 1年〜3年
この時代の教科書は、学年ごとに1冊ずつに分かれていました。
系統学習ということで、昭和22年~の教科書よりも目次のタイトルに分野性が出ています。
口絵には、4ページほどカラーの写真が掲載され、また巻末にはそれぞれさくいんやふろくが付くようになりました。
4.原子と分子|1年 第1分野「2.水と空気」p.83〜p.87
当時の教師用指導書には、以下のように書かれています。
ねらい:
水と空気を中心として、化合物・単体・原子・元素・分子などの概念について指導する。また、燃焼によって起こる化学変化とその表わし方について指導する。
章の特徴:
1.指導要領「(1)水と空気」および「(2)燃焼と熱」の中の化学教材だけをまとめて作られている。
2.原子・分子の出し方は、燃焼の学習のあと、化合・分解、水の成分をへて、化合物・単体・原子・元素・分子の順序をとっている。
3.化学反応式は、本章ではその数を少なくするとともに、いつも模式図と対応して出している。
1.茎のつくりとはたらき|2年 第2分野「1.植物のつくりとはたらき」p.12〜p.17
当時の教師用指導書には、以下のように書かれています。
ねらい:
1年では、おもな植物の外部形態を調べて、植物はいろいろの種類に分けられることを学んだ。また、植物のからだは細胞から成り立ち、細胞が集まって組織を、その組織が集まって器官を作っていることも学んだ。ここでは、それらのいろいろな植物の内部構造を調べて、植物の各器官がどのような構造をしているか、また、どのようなはたらきをしているかについて学習する。
章の特徴:
1.できるだけ実験・観察を行い、段階的に思考の段階を経て、問題を解決させるよう記述を工夫した。
2.内容のつながりの上から、茎・葉・根の順にし、呼吸作用を光合成の次に配し、二大作用を比較させることを容易にした。
2.鉱石と金属|2年 第2分野「4.天然資源」p.122〜p.127
当時の教師用指導書には、以下のように書かれています。
ねらい:
ここでの学習は大きく三つに分かれ、それぞれのねらいが少しずつ違っている。
1.生物資源の利用と保護について知ること。
2.広い意味での化学生産の基礎の理解。
3.エネルギー資源の現在と未来について知ること。
章の特徴:
1.本章は3年第2分野最後の章として、つとめて、これまでの学習との関連をとり、それを発展させ、補足するようにしている。
2.本章では、化学の原理の応用としてだけでなく、産業としての化学工業の性格も理解できるようにしている。
3.化学反応式は本章では「3.無機化学工業」においてのみ出し、さらにいつも分子式の下に物質名をつけて出している。
昭和41年(1966年)版 新版 中学校理科 1〜3
昭和44年(1969年)版 新訂版 中学校理科 1〜3
中学校理科の教科書の変遷