教科書いまむかし
教科書紹介 中学校理科編
1昭和22年(1947年)
学習指導要領(試案)生活単元学習
昭和22年の学習指導要領(試案)に合わせ、中学校用理科教科書『私たちの科学』が、文部省の編集・発行で制作されました。B6判の小型サイズで、中学1年から3年まで単元ごとに分かれており、各学年6冊ずつの計18分冊になっていました。のちに各学年上下巻の新版がつくられました。
当時は、生活の中から題材を選んで学習する「生活単元学習」であり、「何をどれだけ食べたらよいか」や「機械を使うと仕事はどのようにはかどるか」などの単元がありました。
ここでは昭和22~23年版『私たちの科学1~18』を紹介します。
国立教育政策研究所
「学習指導要領データベース」
昭和22〜23年(1947〜1948年)版 私たちの科学 1〜18
中学1年から3年まで単元ごとに分かれており、各学年6冊ずつ計18分冊あります。自分たちの生活をよりよくするために、また国が文化的に発展するにはどうすればよいのか、などの観点でこの時代の技術などが掲載されています。
1.着物の材料はおもに何か|「私たちの科学7 着物は何から作るか」p.1〜p.5
ここでは、人々がかつて着物(衣服)に植物を使ったり、動物の毛や皮などを利用したりしてきたことを紹介しています。さらに、人造絹糸や紙の作り方、革や毛皮の加工方法など、さまざまな繊維について材料や作り方をそれぞれ解説しています。
2.電氣通信はどんなに有用か|「私たちの科学16 交通通信機関はどれだけ生活を豊かにしているか」p.21〜p.22
ここでは、はじめに以下のような記述があり、電気通信の重要性について紹介しています。
音や光を利用する通信方法は手まがかかったり、遠方まで届かなかったりして、私たちの意志を遠い所まで確実に、しかも早く傳えることは困難である。それで通信の途中だけ音に頼らないようにすることがくふうされた。
5.交通機関にはどんなものがあり、どのように働いているか|「私たちの科学16 交通通信機関はどれだけ生活を豊かにしているか」p.63〜p.66
近世になり急速に発展した交通機関と、そのもととなっている原動機(とくに熱機関)について、解説しています。
昭和25年(1950年)版 私たちの科学研究 1〜18
昭和27年(1952年)版 私たちの科学研究 新版 1-上〜3-下
昭和22年の学習指導要領は、戦後の教育改革によって短期間のうちに作成されたものでした。そこで、昭和23年以降、文部省は調査を行いながら、学校や編集委員会による問題点の研究などを行い、改訂作業を進めました。
そして、昭和26年に学習指導要領が改訂されました。この学習指導要領は、昭和22年からの、生活の中から題材を選んで学習する「生活単元学習」が受け継がれています。
昭和28年には「理科教育振興法」が公布され、国民の生活における科学の重要性が見直されました。
大日本図書では、文部省検定済教科書である『中学新理科』を発行しました。
ここでは昭和30年度版『中学新理科』を紹介します。
国立教育政策研究所
「学習指導要領データベース」
昭和30年(1955年)版 中学新理科 1年上〜3年下
大きさはA5判、各学年上下巻の6分冊です。各学年に8単元あり、1学期、2学期で3単元ずつ、3学期で2単元を学習する形になっています。
1.生物の生活|中学新理科1上p.51〜p.52
この単元の構成について、当時の教師用指導書には、次のように書いてあります。
ここでは、最も親しみのある花のさく植物を始め、私たちをとりまく、ごく普通の動物・植物について、それらの種類・形態・構造、生活の仕方、人生との関係について理解させるとともに、飼育・栽培の基本的な態度や技能を養い、さらに、池や川、海の生物と範囲を広げていき、最後にはかんたんではあるが、忘れ得ぬ寄生動物と微生物について学び、私たちの生活とのつながりを明瞭にしている。
現在は教科書にない「6.寄生動物」のページをご覧ください。
3.健康な生活|中学新理科2上p.126〜p.132
この単元について、当時の教師用指導書には、次のように書いてあります。
健康な生活を求めて、幸福な社会を営もうとすることは、我々の最も欲求するところである。この健康な生活を営むための必要な要素は、身体の正しい理解から出発したところの保健衛生及び衣服・食物・住居などの合理的生活であり、科学的に生活を処理して行く能力であり、態度である。
この単元では、食物・衣服・住居・保健衛生を一つの単元にまとめて、これを健康な生活の増進という面から学習するところに、設定の理由がある。
「3.住居」の中から災害と住居についてのページをご覧ください。
5.機械のしくみ|中学新理科3下 口絵1〜口絵2
この単元のねらいについて、当時の教師用指導書には、次のように書いてあります。
2年の「8.力と運動」で習得した機械の原理的事項を発展させ、中学校教育完成期の教材とし、また生徒の物事を抽象的に考えようとする傾向と、今ひとつ将来の職業に関係することを少しでも知りたい、研究したい、という欲求とをマッチさせて、ここに「機械のしくみ」という単元を生み、その内容としては我々に最も親しみ深い、自転車・ミシン・時計などを中心に、必要と興味とによって、仕事の原理、エネルギー不滅の法則、往復運動と回転運動との変換、科学進歩のもたらす精巧な機械文明の驚異などについて、胸をはずませながら学習体得させることがねらいである。
この単元に関連した巻頭の口絵をご覧ください。
昭和33年(1958年)版 中学校理科 1学年〜3学年
中学校理科の教科書の変遷