教科書いまむかし
教科書紹介 中学校理科編
4昭和52年(1977年)
学習指導要領学習負担の適正化
科学技術の発展に対応して教育内容の充実を図った結果、学校教育が知識の伝達に偏る傾向が生まれ、児童・生徒への負担の増加などが問題となりました。
そこで昭和52年の改訂では「ゆとりと充実」をキャッチフレーズに、ゆとりある充実した学校生活の実現、そして学習負担を適正化するため、各教科の目標や内容を精選するなど、指導内容を大幅に軽量化し、思い切った授業時間の削減が行われました。
その結果、中学校の理科では1・2年が105単位時間、3年が140単位時間になりました。いくつか削除・軽減された内容がある一方で、自然と人間の関わりについての認識を一層深めるために、充実した内容もありました。
大日本図書では、昭和56年に『中学校理科』を発行しました。その後、昭和59年、昭和62年、平成2年に改訂版教科書を発行しています。
ここでは、昭和56年版『中学校理科』を紹介します。
国立教育政策研究所
「学習指導要領データベース」
昭和56年(1981年)版 中学校理科 1分野上〜2分野下
第1分野と第2分野の構成で、それぞれ上下巻に分かれています。
特に第1章では小学校との関連を重視し、身近な物質に触れるなかで、科学の方法が無理なく習得される単元配列になっています。そして、発達段階を追い、生徒の理解の過程に従って、基礎・基本を習得し、発展していけるようになっています。
また、それまでの教科書に比べ、1ページあたりの文字数を減らしたり、絵や写真を多く取り入れたりした構成になっています。
1-1 物質を熱したときの変化|1分野上「1 物質とその変化」p.10〜p.15
教師用指導書には、以下のように書かれています。
章のねらい
1.物質を加熱すると状態変化、あるいは化学変化が起こる事実を示し、状態変化と化学変化の違いを明らかにする。それをもとに、状態とその変化・化学変化・分解・化合・燃焼などの初歩的概念を理解させる。
2.物質にはたらきかける基礎的な方法を習得させ、物質についての巨視的な見方・考え方を養う。
3.身近にいろいろな種類の物質があり、それぞれ固有の性質をもっている。物質の種類を識別するとき、温度の変化にともなう変化、1 cm$^3$ あたりの重さ、におい、水への溶解性などが特徴として役立つことを理解させる。
4.理科の学習に親しませるとともに、基礎的な実験の技能、器具の操作に習熟させる。
章の導入|1分野下「6 運動とエネルギー」p.105〜p.107
教師用指導書には、以下のように書かれています。
章のねらい
1.モーターを使って電流をつくることを導入として、磁界と電流・力との関連を実験を通して理解させる。
2.電流がモーターによってする仕事を導入とし、仕事や仕事率、仕事の原理などの概念をてこ、斜面、滑車などを使って実験的に気づかせ、光、熱、電流のする仕事について理解させる。
3.日常に見られる物体の運動はある基準をもとに、速さと向きによって分けられることを知り、速さの変わる直線運動をストロボ写真の結果から理解するとともに、等速直線運動についても考え、力が働かない場合の慣性の法則について理解させる。
4.仕事の概念と関連して、運動のエネルギー、位置のエネルギーなどの初歩的な概念についてふれ、力学的なエネルギーと日常生活の関連について認識を深めるとともに、その利用の重要性や有効的な利用について考えさせる。
5.章全体を通して、一見関連のないように見える現象を視点をきめて関連性を見出し、現象を統一的にとらえることの大切さを仕事やエネルギー概念の導入によって理解させることが大きなねらいである。
1-1 身近な生物とその生活|2分野上「1 生物の種類と生活」p.9〜p.13
教師用指導書には、以下のように書かれています。
章のねらい
1.生物が生活場所のいろいろな条件と密接なかかわりをもちながら生活している様子を観察し、生物を生活場所の条件との関連においてみる基本的な見方・考え方を身につけさせる。
2.生物のからだのつくりや生活のしかたと生活場所の条件とを関連づけて理解させる。
3.生物のからだのつくりや生活のしかたの調べ方・データの処理や考察等の基礎的な方法を習得させる。
4.生物を分類することによって、生物は相互に類縁関係があることを理解させる。
5.生物の観察や実験に親しませるとともに、生命の尊重、自然の保護等の基本的な態度を養う。
4-1 空気中の水|2分野下「4 天気の変化」p.9〜p.13
教師用指導書には、以下のように書かれています。
章のねらい
1.地球を取り巻く大気中に起こる現象を、太陽の光のはたらきと水の状態変化に関連づけて調べる方法を理解させる。
2.身のまわりの気象要素の変化を調べることによって、天気の変化に興味と関心をもたせ、気象要素相互の関係を総合的に理解させる。
3.天気の変化の規則性を理解させ、天気図を用いて天気の変化を予測・推論させる。
昭和59年(1984年)版 改訂 中学校理科 1分野上〜2分野下
昭和62年(1987年)版 新版 中学校理科 1分野上〜2分野下
平成2年(1990年)版 新訂 中学校理科 1分野上〜2分野下
中学校理科の教科書の変遷