教科書いまむかし
教科書紹介 中学校理科編
7平成20年(2008年)
学習指導要領 「生きる力」の育成、基礎的・基本的な知識・技能の習得、思考力・判断力・表現力等の育成のバランス
知識基盤社会(※)化やグローバル化などの時代背景を受け、平成10年改訂の学習指導要領で理念としてあげられた「生きる力」を育む重要性がますます叫ばれるようになりました。
また、国際的な学力調査の結果から、日本の児童・生徒には「思考力・判断力・表現力等を問う読解力や記述問題」や「知識・技能を活用する問題」などに課題があるということが明らかになり、平成20年に「基礎的・基本的な知識・技能の習得」、「思考力・判断力・表現力等の育成」、「確かな学力を確立するために必要な授業時数の確保」などを基本的な考え方とした、学習指導要領が告示されました。
これに伴い、中学校ではつまずきやすい内容の繰り返し学習や観察・実験、レポートの作成などを目的として、国語、社会、数学、理科、外国語、保健体育の6教科で授業時数が増加になりました。
理科では、3学年合わせて95時間ほど増加し、環境教育の充実の観点から、以前は選択履修だった「自然と人間」の内容が必修になりました。
※知識基盤社会:平成17年の中央教育審議会答申で示された言葉。「21世紀は「知識基盤社会」(knowledge-based society)の時代である」としている。その特質の例として、以下のようなものが挙げられている。
- ①知識には国境がなく、グローバル化が一層進む。
- ②知識は日進月歩であり、競争と技術革新が絶え間なく生まれる。
- ③知識の進展は旧来のパラダイムの転換を伴うことが多く、幅広い知識と柔軟な思考力に基づく判断が一層重要になる。
- ④性別や年齢を問わず参画することが促進される。
大日本図書では、平成24年に『理科の世界』を発行しました。その後、平成28年に改訂し、『新版 理科の世界』を発行しました。
国立教育政策研究所
「学習指導要領データベース」
平成24年(2012年)版 理科の世界 1年〜3年
B5判は従来通りですが、これまでの分野別上下巻の4分冊から、学年別の3分冊に変わりました。
単元は、観察・実験がしやすい時期、1年~3年で理科室の使用が重ならないこと、発達段階などを考慮し、第1分野・第2分野にとらわれることなく配列しています。



単元1 植物の生活と種類|1年p.19〜p.23
1章では、序単元「身近な生物の観察」を受けて、植物の花のつくり、はたらきを考えながら受粉・結実を学習し、裸子植物と被子植物があるという植物の多様性をとらえます。そして、光合成を行う葉のつくりとはたらき、茎や根の学習を通して、植物の体のつくりとはたらきを学習します。
2章では、それまでに学んだ植物の体の特徴をもとに、被子植物を分類します。そして、植物には種子をつくらないなかまがあることを知り、シダ植物やコケ植物を観察するようになっています。
単元1 化学変化と原子・分子|2年p.7〜p.11
この単元では、化学変化についての実験を行い、結果を分析して解釈し、化合や分解などにおける物質の変化やその量的な関係について理解できるようにしています。さらに、これらの事物・現象を原子や分子のモデルと関連づけてみることや、微視的な見方や考え方を養うことがねらいとなっています。
単元1 運動とエネルギー|3年p.5〜p.9
この単元では、物体の運動やエネルギーに関する実験を通して、物体の運動の規則性やエネルギーの基礎について理解するとともに、日常生活や社会と関連づけて運動やエネルギーの初歩的な見方や考え方を養えるようになっています。
平成28年(2016年)版 新版 理科の世界 1年〜3年
平成24年版と同様に、B5判、学年別の3分冊です。



単元4 大地の変化|1年p.201〜p.205
この単元は、火山や地震について、日本付近のプレートの動きなど地球内部のはたらきと関連づけてとらえさせることがねらいです。
また、野外観察などを行い、その観察記録をもとに、地層の重なり方や広がり方についての規則性や過去のようすを考察させ、大地の成り立ちと変化についての認識を深めること、地学的な事物・事象は長大な時間と広大の空間の中で変化したり生起したりしているという見方や考え方を養うことなどもねらいとなっています。
単元3 電流とその利用|2年p.159〜p.163
この単元は、電流や電圧、電流のはたらき、磁界、静電気に関する実験を行い、電流や電圧、磁界や静電気などについての基本的な性質を理解させるとともに、日常生活や社会と関連づけながら電流や磁界などについての科学的な見方や考え方を養うことがおもなねらいです。
また、回路の作成や電流計、電圧計、電源装置などの操作技能を習得しながら実験を行い、回路の電流や電圧の規則性について理解できるように配慮しています。
単元6 地球の明るい未来のために ー自然と人間と科学技術ー|3年p.255〜p.259
この単元は、これまでの3年間に理科で学んだことを活用して、より深く調べたり考えたりして、自分の意見をまとめたり発表したりする単元です。学習指導要領の第1分野「(7)科学技術と人間」、第2分野「(7)自然と人間」を総合的に扱っています。
中学校理科の教科書の変遷