教科書いまむかし
教科書紹介 中学校理科編
3昭和44年(1969年)
学習指導要領「教育内容の現代化」
高度経済成長による科学技術の発展は、小・中学校の理科の授業で扱う内容の量にも影響を与えました。
昭和44年改訂の学習指導要領は、「科学技術の高度の発展」に対応することが明示され、内容の精選・質的向上とともに「探究の過程を通して、科学の方法を習得させ、創造的な能力を育てること」を目標としていました。
中学校では、内容を軽減したり集約したりするなどの厳しい精選が行われ、「音波」に関する内容などが削除されました。
大日本図書では、昭和47年に『中学校新理科』を発行しました。その後、昭和50年、53年に改訂しました。
ここでは、その昭和47年版『中学校新理科』を紹介します。
国立教育政策研究所
「学習指導要領データベース」
昭和47年(1972年)版 中学校新理科 1分野1〜2分野2
この教科書は、第1分野と第2分野に分かれており、それぞれ1巻、2巻がありました。
単元配列について、当時の教師用指導書には、以下のように書かれています。
第1分野は、「力のはたらき」と「仕事のエネルギー」とは、ともに基本的な概念であり、特にエネルギーは第2分野にもわたって1~3年で学習する内容なので、独立した章とした。
第2分野は、「自然とその中の生物」で生物とそれを取り巻く自然環境、太陽放射のエネルギーを関連付けてとらえさせ、生物領域と地学領域の統一を図り、第2分野の導入的な役割をもたせた。
1-3 融点と沸点|1分野1「1 物質の特性」p.26〜p.31
第1分野の学習は、物質の特性から始まります。
教師用指導書には、以下のように書かれています。
学習のねらい:
物質の密度・融点・沸点・溶解度などいろいろな量を測定させ、それぞれの物質の特性を示す量のあることを発見させる。これらの固有な性質を用いれば、物質の分離や識別ができることを理解させる。このような物質についての巨視的な見方は「4 物質と分子」以降へ発展して、微視的なものの見方の基礎となる。
物質の構造|1分野2「11 物質の構造」p.206〜p.213、口絵
教師用指導書には、以下のように書かれています。
学習のねらい:
原子および原子核の構造、原子の結合機構と炭素化合物についての概要を学習し、中学校における物質概念のまとめとする。
また、章の構成として、すでに学習してきた電子モデルなどの概念を基礎として、まず核外電子の様子に関する事項を学習し、次に、電子核の構成に関する事項を学習する意図をもって、学習の系統を作成している。
2-2 植物の世界|2分野1「2 生物の種類と生活」p.30〜p.35
教師用指導書には、以下のように書かれています。
学習のねらい:
この章全体を流れている基本的な概念は、環境に適応して地球の歴史とともに長い時間の中で進化してきた生物のすがたである。したがって、生物の進化してきたすじみちを理解させることを基底にして、いろいろな生物の種類のからだのつくりや生活のしかたが、環境と密接な関係があることを理解させる。
また、からだのつくりや成長のしくみと、生殖・発生・遺伝などの生物現象について、その基本的なすがたを理解させるために、細胞レベルでの理解を図る。
7-4 大気の圧力と風|2分野2「7 大気とその中の水の循環」p.26〜p.31
教師用指導書には、以下のように書かれています。
学習のねらい:
太陽放射によって、水の状態変化や大気の運動が起こり、これらは大気中の水の循環としてまとめられることを、いろいろな気象要素の変化、気象現象を通して、統一的に探究させていくことをねらいとする。
また、章の構成には、「「3 地球を取り巻く宇宙」で学習した太陽放射を受け、太陽放射が地球上の気圏に及ぼす影響を大局的に把握させることから始まる。すなわち、大気中の現象を水の循環というグローバルな立場から概観させ、水の状態変化および大気の運動の2点から内容を系統的に学習し、大気中の太陽放射の流れを追究する。最後に「天気の変化」で総合的な見方を養う。」とあります。
昭和50年(1975年)版 改訂 中学校新理科 1分野1〜2分野2
昭和53年(1978年)版 新版 中学校新理科 1分野上〜2分野下
中学校理科の教科書の変遷