教科書いまむかし
教科書紹介 中学校理科編
5平成元年(1989年)
学習指導要領社会の変化に自ら対応できる心豊かな人間の育成
平成元年に改訂された学習指導要領では、「社会の変化に自ら対応できる心豊かな人間の育成を図ること」をねらいとして、個性を生かす教育が実施されました。
新しい学習指導要領によって、小学校では、1・2年の理科と社会科が廃止され、「生活科」が新設されました。そのなかには、野外の自然観察、動物の飼育、植物の栽培などの理科的な内容が含まれました。また、中学校では、選択履修の幅を広げ、生徒の個性を生かす教育の充実が図られました。
中学校の理科では「自然に対する関心を高め、観察、実験などを行い、科学的に調べる能力と態度を育てるとともに自然の事物・現象についての理解を深め、科学的な見方や考え方を養う」という目標が掲げられました。
選択教科としての「理科」では、生徒自身の積極的な意欲と強い問題意識によって課題が設定されることが望まれ、生徒自身に自然を主体的に調べる方法を習得させ、科学的な思考力、表現力、探究心などが育成できるような指導が求められました。
大日本図書では、平成5年に『中学校理科』を発行しました。その後、平成9年に改訂し、『新版 中学校理科』を発行しました。
ここでは平成5年版『中学校理科』を紹介します。
国立教育政策研究所
「学習指導要領データベース」
平成5年(1993年)版 中学校理科 1分野上〜2分野下
第1分野と第2分野の構成で、それぞれ上下巻に分かれています。また、A5判からB5判に大きくなり、見やすくなっています。
単元の構成は、第1分野(物理・化学)と第2分野(生物・地学)に分かれています。
1-1 水溶液の性質|1分野上「第1章 物質とその変化」p.5〜p.9
いろいろな水溶液の性質を調べる学習を出発点として、溶解度、濃度、気体の性質、状態変化と展開します。気体の性質では、水溶液に溶けている気体を導入とし、二酸化炭素の発生とその性質を調べます。また、いろいろな気体の性質を学習していきます。
物質の状態変化では、体積と質量の変化を調べ、密度へと展開させています。また、状態変化と温度の関係から、融点、沸点、蒸留へと学習が展開するように構成されています。
1-1 二つの力のつり合い|1分野下「第6章 運動とエネルギー」p.83〜p.85
この章は、1年2章「力とその表し方」、2年4章「電流の流れ方」の内容が学習の素地になっており、それらを総合したまとめとして位置づけられています。また、力の概念と同様にイメージしにくい仕事やエネルギーの概念は、できるだけ具体物を見せながら、その定着を図るように構成されています。
1 身近な生物の観察|2分野上「第1章 植物の生活と種類」p.5〜p.9
この章は、「生物の観察方法→微小な生物→種子植物→花が咲かない植物→分類」という学習の流れで、種子植物を中心に個体および、種のレベルで生物を扱う構成となっています。
この章では、植物の
1.種類によっての多様性と共通性
2.個体として、種としての生命維持
3.生物界での生産者としての役割
を基本的な構成としています。
1-1 天気のようす|2分野下「第4章 天気とその変化」p.5、 p.8〜p.9
この章は、「気象の観察・観測→空気中の水→気圧と風→天気」という学習の流れに沿って、大気の現象をグローバルな視点からとらえられる構成となっています。
構成の特徴としては、太陽エネルギーのはたらきで大気の運動と水の状態変化が起こり、気象の現象が現れるという基本的な考え方を観察・実験・実習などの直接体験を通して学習できるように配慮しています。また、生徒の活動は、なるべく身近で基本的な現象を、天気の変化と関係づけて学習できるように教材の選択と構成を工夫しています。
平成9年(1997年)版 新版 中学校理科 1分野上〜2分野下
中学校理科の教科書の変遷