教科書いまむかし
教科書紹介 小学校算数編
6平成10年(1998年)
学習指導要領基礎・基本を確実に身に付けさせ、自ら学び自ら考える力などの「生きる力」の育成
平成年代に入ると、受験競争の行き過ぎや、児童・生徒の不登校、学級崩壊などのさまざまな教育問題が注目されるようになりました。そうした中、平成10年に改訂された学習指導要領では、ゆとりのなかで特色ある教育を展開し、自ら学び自ら考える力などの「生きる力」を育成することがねらいとされました。完全学校週5日制の実施にともない、指導内容が厳選される一方、総合的な学習の時間が新設され、算数・数学科では「算数的活動」「数学的活動の楽しさ」といった文言が目標に盛り込まれました。
総授業時数が表のように削減され、学習内容も各教科、基本的に削減されました。
配当時間 | 1年 | 2年 | 3年 | 4年 | 5年 | 6年 |
平成元年版H1 | 850 | 910 | 980 | 1015 | 1015 | 1015 |
---|---|---|---|---|---|---|
平成10年版H10 | 782 | 840 | 910 | 945 | 945 | 945 |
大日本図書では、平成14年に『たのしい算数』を発行し、その後平成17年に『新版 たのしい算数』を発行しています。
ここでは、平成17年発行の『新版 たのしい算数』を紹介します。
国立教育政策研究所
「学習指導要領データベース」
平成14年(2002年)版 たのしい算数 1〜6下
平成17年(2005年)版 新版 たのしい算数 1〜6下
平成17年度版の基本方針は次の4点です。
- ◦算数の楽しさや学ぶことの充実感を味わいながら学習を進めることができるようにする。
- ◦算数の内容の系統性を重視し、基礎的な知識・技能が確実に身に付くようにする。
- ◦算数的活動を重視し、多面的なものの見方や論理的な考え方を培うとともに、数量や図形についての感覚が豊かになるようにする。
- ◦主体的に問題を解決する活動を重視し、発展的に考える力が育つようにする。
目次を見ると、授業時数削減のため、特に5、6年生で「合同」「文字と式」「場合の数」などの単元がなくなっていることがわかります。また、全学年を通じて、後の学年へ学習内容が移されていることもわかります。
算数的活動
平成10年度改訂の指導要領では「算数的活動」が強調され、児童の主体的な活動が重視されました。さらに「算数における活動は作業的・体験的な活動だけで終わるものではなく、しだいに具体物を用いなくても念頭での思考活動ができるようになってくる。そのためにも、具体物を用いたり、実際に作業や体験をする活動に十分に取り組めるようにすることが必要である」(平成11年5月発行小学校学習指導要領解説 算数編 p.10)とされました。
教科書上では、低・中学年を中心に、作業的・体験的な活動が扱われ、学年があがるにつれて念頭での思考活動が重視されています。
電卓の扱い
平成元年の改訂から学習指導要領に位置づけられた電卓ですが、この時代の学習指導要領では、「問題解決の過程において、桁数の大きい数の計算を扱ったり、複雑な計算をしたりする場面などで、そろばんや電卓などを第4学年以降において適宜用いられるようにすること」とされ、5年以降だった扱いが4年以降に変更されました。
発展的な学習
学習指導要領が告示された頃から、しだいに学力低下が叫ばれるようになりました。そうした流れを受け、平成17年版教科書からは、学習指導要領で定められた内容を超えた「発展的な学習」が、本文の内容に関連した内容として、総ページの1割程度認められました。
特設ページ・まとめ
平成8年(1996年)版 新版 たのしい算数 1〜6下
小学校算数の教科書の変遷