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国際キログラム原器
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国際キログラム原器 International Prototype Kilogram は,1879年につくられた白金 90 % ,イリジウム 10 % の合金でできた直径と高さが 39.17 mm の円柱形の分銅です。完全な円柱形ではなく,角が丸められています。
国際キログラム原器は世界に1つしかなく,フランスの国際度量衡局(こく さい ど りょう こう きょく)に保存されています。
各国にはこの国際キログラム原器の複製が配布されていて,日本のキログラム原器は産業技術総合研究所が管理しています。
国際キログラム原器に使われている白金イリジウム合金は,白金 Pt のもつ化学変化しにくい性質はそのままに,白金よりも磨耗しづらい特徴をもっています。
キログラム原器を円柱に見立てて,密度を求めてみましょう。
キログラム原器の体積 V は,底面の半径 r と高さ h を使って V=πr2h で求められます。
質量は 1 kg ですから,密度 ρ は次のようになります。ρ=mV=mπr2h=1kgπ×(39.17mm2)2×39.17mm=0.00002118602127kg/mm3=21.2g/cm3鉄の密度が 7.87 g/cm3,金の密度が 19.30 g/cm3 ですから,とても大きいことがわかります。
密度が大きいほど円柱の表面積が小さくて済むので,表面で反応が起こる危険を下げられます。
また,キログラム原器は,2重のガラス容器によって真空中に保存されています。
しかし,それほど厳重な管理をしても,気体が表面に吸着することなどによって,1年に 1 µg(0.0000001 %)ほど質量が増加してしまいます。
こうした問題を改めるため,人工物に依存しない定義として,プランク定数 h を使った定義が2019年5月20日より用いられることになりました。
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プランク定数
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2019年5月20日から,kg はプランク定数を用いて定義されるようになりました。
プランク定数は,ドイツの物理学者マックス・プランク(1858年〜1947年)に因んだ定数です。
[Public domain]プランクは,1900年,光を放出する粒子のエネルギーはある最小単位の整数倍の値しかとらないというプランクの法則を提唱しました。この関係は,エネルギー素量 ϵ,光子の振動数 ν と定数 h から次のように表されます。
ϵ=hνこの h がプランク定数です。
また,アインシュタインは,特殊相対性理論の中で,質量とエネルギーは同等で,静止している物体のエネルギー E は,質量 m と真空中の光速 c から,次のような関係があることを示しました。
E=mc2プランクの法則と E=mc2 から,式を変形してみます。
[Public domain]E=mc2=hνm=hνc2ここで,光速 c は 299792458 m/s,プランク定数 h は 6.62607015 × 10−34 J•s なので,質量 1 kg のときの 振動数 ν を求めると,次のようになります。
m=hνc2ν=mc2h=1×(299792458m/s)26.62607015×10−34J⋅s=(299792458)26.62607015×10−34s−1=(299792458)26.62607015×10−34Hzつまり,1 kg は,周波数が (299792458)26.62607015×10−34 Hz の光子のエネルギーと等価な質量と言い換えることができます。
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1 kg ってどのくらい?
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1 L の牛乳パックが,およそ 1 kg です。
牛乳は比重(水の密度に対する比)が 1.032(15 ℃)です。水の密度は,15 ℃ のとき 999.138 kg/m3(=0.999138 kg/L)なので,1 L の牛乳の質量 m は,次のように求められます。m=1.032×0.999138≒