仕事率:ワット/Watt/SI組立 仕事率:ワット/Watt/SI組立

定義:

$1\,$$\text{s}$ 間に $1\,$$\text{J}$ の(仕事をするときの)仕事率($\text{J/s}$)

定義2:

電圧 $1\,$$\text{V}$ の電源から $1\,$$\text{A}$ の電流が流れているときの電力($\text{V}\cdot\text{A}$)

SI基本単位による表記:

$\text{m}^2\,\cdot\,\text{kg}\,\cdot\,\text{s}^{-3}$

ジェームズ・ワット
仕事率の単位ワットは、イギリスの発明家ジェームズ・ワット(1736年~1819年)の名前からつけられました。
ジェームズ・ワットは、蒸気機関で知られる発明家です。
蒸気機関というのは,水を加熱してできた蒸気の熱エネルギーを,機械的な仕事に変換する装置のことです。ワットは,当時鉱山の排水用ポンプに使われていたトマス・ニューコメンの蒸気機関の効率の悪さに気づき,シリンダーと復水器を分けるなどの工夫を加えました。ワットの蒸気機関は,ニューコメンの蒸気機関に比べて5倍も効率がよかったため,ポンプ以外のさまざまな用途に利用され,産業革命の象徴となりました。
こうした功績から仕事率の単位にワットの名がつきましたが,ワット自身が考案した仕事率の単位は別のものでした。彼は,自分の発明した蒸気機関の性能を明らかにするために,一定時間あたりにできる仕事,つまり仕事率を測る単位として馬力を提唱しました。
ブレーカーと $\text{W}$ 数
身のまわりで見かける $\text{W}$ といえば,電化製品の消費電力表示です。

たくさんの電化製品を一度に使ったら,ブレーカーが落ちて真っ暗になってしまった! などという経験はありませんか? ブレーカーを落とさないためには,電化製品の $\text{W}$ 数を知っておくと便利です。

右の写真は家庭用の分電盤です。

分電盤

電化製品の使いすぎで落ちるのは,左のアンペアブレーカーか右の安全ブレーカーです。 (→図をクリック)

分電盤2


ブレーカーは,決められた大きさ以上の電流が回路を流れると,回路を開いて電流を流れないようにする装置です。
分電盤
消費電力 $P$ が $60\text{ W}$ の白熱電球に流れる電流 $I$ を計算してみましょう。家庭用の電圧 $V$ が $100\text{ V}$ の場合,次のように求められます。
$$ \begin{align} I &= \frac{P}{V}\\ &= \frac{60 \,\text{W}}{100 \,\text{V}}\\ &= 0.6 \,\text{A} \end{align} $$
つまり,電化製品を使うときに流れる電流の大きさは,消費電力の 100分の1の大きさの値になります。このように,使用したい電化製品の電流の大きさの和が,ブレーカーに表示されている数値を下回るように,使用すれば良いのです。
$1\text{ W}$ ってどのくらい?
心臓の仕事率がおよそ 1$\text{W}$ です。

ヒトの心臓

心臓は休みなく拍動して,全身に血液を送っています。1回の拍動で送られる血液の量は $70〜80\text{ mL}$ です。

さて,日本人間ドック学会によると「異常なし」と判定される血圧は $129\text{ }$$\text{mmHg}$ 以下/$84\text{ mmHg}$ 以下,心拍数は1分あたり $45〜85\text{ }$回だそうです。
ヒトの心臓
それぞれの平均値(血液の流量 $75\text{ mL}$/回,血圧 $106.5\text{ mmHg}$,心拍数 $65\text{ }$回/$\text{min}$)より,心臓の仕事率 $P$ は次のように求められます。 (仕事 $W$,時間 $t$,力 $F$,距離 $x$,面積 $S$,体積 $V$,圧力 $p$)
$$ \begin{align} P &= \frac{W}{t} = \frac{Fx}{t} = (F\frac{V}{S}) \frac{1}{t} = \frac{F}{S}V \frac{1}{t} = \frac{pV}{t}\\ &= 106.5 \,\text{mmHg} \times 75\,\text{mL} \times \frac{65}{1\,\text{min}}\\ &= 106.5 \times \frac{101325}{760} \,\text{Pa} \times 75 \times 10^{-6} \,\text{m}^3 \times \frac{65}{60 \,\text{s}}\\ &= 1.15 \,\text{W} \end{align} $$