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どうしてこんなに定義があるの
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gallonは,ラテン語の gallēta (ボウル,バケツの意)に由来する体積の単位です。
ヤードポンド法の体積の基準となる単位なのに,定義の値が3種類もあるというやっかいものです。gal は,古くから体積の単位としていろいろな分野で使われていましたが,それぞれ大きさが異なっていました。
そこで1824年,イギリスは gal の定義を統一しました。その当時,大きく3つの gal の定義が使われていました。一つ目は,穀物の体積に使われていた コーンガロン corn gallon です。
コーンガロンは,18 bushel(ブッシェル)と定義されていました。そして,1 bushel は,直径 18 と 12 in(インチ),高さ 8 in の円柱の体積で定義されていました。
1 gal が 1 bushel の 110 ではなくて 18 というのが,ヤードポンド法らしいややこしさです。しかも,1 bushel の定義が立方体でなく円柱,しかも直径(または半径)と高さの比が 1:1 でないのですから……。
さて,1 in は,136 yd(また 110 じゃない!)に相当する長さで,2.54 cm です。円柱の体積 V は,底面の半径 r,高さ h とすると V=πr2h で求められます。これを使って,コーンガロンの大きさを求めてみましょう。
1corn gallon=18bushel=18×π(18.52in)2×8in=268.8025214in3=268.8025214×(2.54cm)3=4404.884122cm3=4.404884122L二つ目は,ワインの体積に使われていた ワインガロン wine gallon です。
ワインガロンは,直径 7 in,高さ 6 in の円柱の体積で定義されていました。
また面倒そうな計算と思われたかもしれませんが,ワインガロンの計算のときには円周率を 227(=3.142857…)で近似することになっていたので,少しすっきり整理できます。
1wine gallon=227×(72in)2×6in=231in3=231×(2.54cm)3=3785.411784cm3=3.785411784L…コーンガロンとすいぶん大きさがちがいますね。コーンガロンを 1 とすると,ワインガロンは 0.86 ほどです。
三つ目が,ビールの体積に使われていた エールガロン ale gallon です。
エールというのは,上面発酵(上面発酵酵母を使って常温で発酵させる方法)で醸造されるビールのことです。これに対して,日本でよく飲まれているラガーは,下面発酵(下面発酵酵母を使って 15 ℃ 以下の低温で発酵させる方法)で醸造されます。
1824年当時,エールガロンは 282 in3 とされていました。
1ale gallon=282in3=282×(2.54cm)3=4621.152048cm3=4.621152048Lその後,メートル法との互換性を重視して,1 gal は正確に 4.54609 L と定められました。
こうしてイギリスでは統一された gal でしたが,アメリカでは2つの gal が残ってしまいました。
一つ目が,米乾量ガロン US dry gallon です。これはコーンガロンに由来する単位で,268.8025 in3 と定められています。ただし,通常 bushel で取り扱うため,あまり使用されてはいません。
もう一つが,米液量ガロン US fluid gallon です。これは,ワインガロンと同じ 231 in3 です。現在でもアメリカで広く使われている単位で,ガソリンや牛乳などの体積は gal で表されています。
つまり,イギリスが gal を統一したときに捨てられた2つが,アメリカで使われている gal というわけです。
なお,日本の計量法では,英ガロンと米乾量ガロンの使用は認められておらず,米液量ガロン(= 3.785411784 L)を丸めた値 3.785412 L を 1 gal としています。
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1 gal ってどのくらい?
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理科系の大学や研究所で見かける茶褐色の大容量容器は,ガロン瓶 と呼ばれています(左写真)。このガロン瓶の容量が,およそ 1 gal です。
『ガロン』瓶 なのに「およそ」? と思ったかもしれませんが,この容器の容量は 3600 mL で,実は 1 gal (= 3.785412 L)というより 2 升 に近いのです。
ガロン瓶という呼び名は,アメリカなどで見られる 1 gal の容器(右写真)と似た形のためについたものです。
ほかには,アメリカンフットボール用のボールの体積が,約 1 gal です。
アメリカンフットボールは,ラグビーボールのような楕円のボールを使った球技で,ラグビーとはちがって前に投げることができます。
小学校の体育で,タックルの代わりに腰につけたフラッグをとる「フラッグフットボール」を経験した方もいるでしょう。アメリカンフットボールで使用されるボールは,ラグビーボールより一回り小さいものです。
規格では弧の長さが長弧 79.4~81.9 cm,短弧 51.9~53.1 cm と定められています(→ボールをクリック)が,ラグビーボールよりも尖っているので計算で求めるのは難しそうです。
そこで,水に沈めて体積を求めることにしました。
バットの上に 10 L のバケツを置いて水を張り,ボールをゆっくり沈めます。そして,ゆっくり取り出してバットにこぼれた水の量を 1 L の計量カップではかりました。
3回くり返して平均をとると 3.827 L(3.83 L,3.82 L,3.83 L)でした。ほぼ 1 gal ですね。
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テンガロンハット
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カウボーイが被っている,周囲につばがついた帽子をテンガロンハットといいます。ガロンと聞いてこれを思い浮かべた人もいるでしょう。
正式には,カウボーイの帽子は何でもテンガロンハットと呼ぶわけではなく,皮革製ではなくフェルトや麦わらを使ったてっぺんが丸くて長い帽子をテンガロンハットと呼ぶようです。
テンガロンの名前は,容量が 10 gal であることに由来する,と言われることがありますが,10 gal (≒ 38 L)はとても入りそうにないですね。
テンガロンの『ガロン』は容積の gallon ではなく,スペイン語の galón に由来するという説が有力です。この galón は,ひもやリボン状のものを意味する言葉で,つばの根元に飾りひもがぐるっと巻かれていることからその名がついたのでした。
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単位の換算
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空欄に数値入力することで、単位を換算することができます。
gal = L