vol.25 - No.11 (2023年9月1日)
前回100頭以上孵化したと報告したヒメアカタテハの幼虫は、大きくなるにしたがって数えやすくなり、実際には150頭に迫る数でした。栄養価の高いハチミツをヒメアカタテハの餌としてちょうどよい濃さに薄めることができたと思われ、たくさんの卵を産むことができたようです。幸運にも十分すぎる個体数を得ることができました。容易に手に入れることができるヨモギが食草であったため、たくさんの幼虫がぐんぐん大きくなりました。孵化して半月ほどたち、終齢幼虫は次々と蛹になっています。もう餌を与えることも糞の掃除をすることもしなくてすみます。たくさんの蛹がヨモギの枝にぶら下がっているため、羽化の瞬間に立ち会える確率はぐんと高まります。加えて、よい位置で蛹化や羽化をする個体を選ぶことも可能な状態です。何年もの間求め続けたゴマダラチョウの卵はいまだに手に入れることができていないのに対し、ちょっとした偶然で容易にしかもたくさん手に入れることができたヒメアカタテハの卵。自然を相手にする場合には予測が不可能なことばかりであることを改めて痛感することになりました。質の良いヨモギが十数メートル生えていた道端が、1日のうちに全て除草されるといった出来事も飼育中に起こりました。あれあれと思いましたが、前にも書いたようにヨモギは少し探せば簡単に見つけることができます。そのヨモギを食草にしてくれていたことで、苦労なく飼育を続けることができました。蛹になるときに失敗してしまうものも少しはいましたが、ざっと数えても80頭を超える蛹がヨモギの枝や水槽のふたにぶら下がりました。羽化したチョウは自然に帰してあげようと考えていますが、温暖化の影響で、ヒメアカタテハの繁殖地域は年ごとに北にを拡大しています。失敗する個体のことを考えても50頭以上の成虫を窓から放すことになります。生態系への影響を考えると、いいのかなという思いもあります。
さて今回は、アメリカオニアザミを紹介します。生態系被害防止外来種で、爆発的と表現してもよいほどあちこちで繁殖しているので、今回と次回(10/1)の2回に分けて紹介します。