vol.23 - No.18 (2021年12月15日)

前回お話ししたルリタテハの前蛹が寄生バチの犠牲になった話の続きです。アオムシサムライコマユバチに寄生されたため蛹になれなかった前蛹は、まゆからハチの成虫が出てきてから数日の間に次々と死んでしまいますが、2週間ほど生きていた前蛹もいました。ルリタテハの生命力にも驚かされますが、寄生バチの幼虫は、宿主の体を蝕みながらもその命を維持させ、自らが育つための栄養を奪い続けたことになります。そのしたたかさにはなお一層驚かされます。さて、無事だった2匹の蛹がその後どうなったかですが、2匹とも羽化して成虫になりました。それはよかったのですが、私の目的、羽化シーンの撮影は残念な結果に終わりました。アゲハの仲間などは羽化する前兆が分かりやすいのですが、黒に近いこげ茶色をしているルリタテハの蛹は羽化前にはさらに黒くなり、蛹の皮と中の成虫としての体との間に隙間ができることによる色の変化を、外側から確認することができません。ですが、蛹化してから10日目の朝のことです。1匹の蛹の体を震わせる動作が今までよりぐんと増えたので、もしかしてと思い、準備をしてビデオ撮影を始めました。目的は羽化の瞬間です。なので、5〜10分ほど録画しては、いったん止めてデータを消去、ということを繰り返していました。そして、朝食の時となったので、録画をしたまま20分ほどで食事をすませて戻りました。すると、ルリタテハはすっかり羽をのばし、きれいな成虫になっていました。どのように撮影できたか確認するためにファインダーをのぞき、録画停止ボタンを押そうとしたのですが、カメラの状態を見て唖然としました。なんと、録画ボタンがしっかり押せていなかったのです。ただ、蛹はもう1匹います。そこで、絶対に羽化の瞬間を撮影するぞと思いながら、もう1匹の蛹の観察を昼ごろまで続けました。ところが、こちらの蛹は蛹化が1日後だったためか羽化する気配がありません。ほとんどの場合は午前中に羽化するのですが、その日は午後になってしまったため観察をやめてしまいました。それから2時間ほど後、何気なく蛹を見て再び唖然。そこにはすっかり羽をのばした2匹目の成虫がいたのです。ルリタテハの羽化する瞬間の撮影は、こうしてまたの機会にということになりました。

さて今回は、チャドクガ(3)の3回目です。6齢幼虫が成虫になるまでのようすです。