アナレンマ

空カメラがとらえた不思議な現象

固定カメラで撮影した空のようすを毎日同じ時刻で集めてみると,おもしろい現象が観察できました。

毎日同じ時刻の太陽を観察すると,1年かけて位置が変化します。しかし,その軌跡は,直線ではなく8の字を描きます。
この不思議な現象を「アナレンマ」といいます。アナレンマは,日によって太陽の南中時刻が変化することを示しています。


こうした現象が起こるのは,地球の公転軌道が楕円であることと,公転軌道を動く速度が一定ではないことが原因です。
日の出・日の入りは季節によって変化しますが,正午にはいつも太陽が真南(南中)にあると予想されます。
しかし,今日真南にある太陽が,明日再び真南に来るするまでの時間はピッタリ24時間ではないので,1日ごとに南中時刻がずれます。
このような南中する時刻が1年の間に変化することで生まれるズレを「均時差」と呼びます。
地球が太陽に近い位置(近日点)にあるときは,単位時間当たりに公転で進む距離は大きくなり,逆に地球が太陽から遠い位置(遠日点)にあるときは,進む距離が小さくなります(ケプラーの第2法則)。さらに,地球の公転軌道が楕円のため,地球上のある地点から太陽に向かうまでの自転1周の時間は,日によって異なります。そのため「均時差」が発生するのです。
この均時差によって生じる南中時刻のずれの分だけ太陽の位置が横にずれ,8の字を描くようになるのです。


実は,この「アナレンマ」という現象は江戸時代まではありませんでした。

日本は明治初期まで,太陽が南中する瞬間を正午とする時刻(視太陽時)を用いていました。つまり日時計です。

日時計を使うと,南中時刻=正午となるので,1年間正午に太陽を観察しても,太陽の位置は8の字を描きません。

日時計に頼らずに時刻を決められるようになって初めて,正午に南中しないという事象が発生するようになったのです。

毎日決まった時間と場所で空の写真を撮影すれば,アナレンマは観察できます。
しかし,現実には雨や曇りの日もあるので,1年間だけでは難しいものです。
team soraでは,2011年から1分間隔で空の画像を撮影していて,約10年の蓄積がアナレンマの映像につながりました。
(菱沼美咲・筆保弘徳)