2020.8.17
新型コロナウィルス感染症の影響を考えると,できるだけ公共交通機関の利用は避けたいですよね。
そこで最近,外出には自転車を使うようにしています。
都内をのんびり走っていると,大きな黒いリュックを背負った人によく追い抜かれます。宅配のアレです。
都内をのんびり走っていると,大きな黒いリュックを背負った人によく追い抜かれます。宅配のアレです。
黒いリュックの人たちが乗るのは,写真のようなクロスバイクや,電動アシストのついたタイプが多いようですが,タイヤの細いロードバイクや折りたたみ式のミニベロの人も目にします。
ロードバイクや電動アシスト自転車なら抜かれても納得なのですが,ミニベロに抜かれたときにちょっと違和感を覚えました。
私は比較的タイヤの大きいシティサイクル(≒ママチャリ)に乗っているのですが,ミニベロはタイヤが小さいですし,自転車に乗っている人がそれほど一生懸命漕いでいるようすはないのに軽やかに進んでいるのです。
…よく見てみると,フロントのギアが私の自転車より大きいようです。
そこで,標準的なシティサイクルとブリジストンの折りたたみ式自転車シルヴァF8Fで比べてみました。
タイヤ直径〔インチ〕 | 前ギアの歯数 | 後ギアの歯数 | |
---|---|---|---|
シティサイクル | 27 | 44 | 14〜28 |
シルヴァF8F | 20 | 52 | 11〜30 |
自転車を一漕ぎ(=前ギアが1回転)すると,前ギアの歯数分だけ後ギアが回転します。シティサイクルなら44歯分です。後ろが一番軽いギア(28歯)のときなら,$44 \div 28 = 1\dfrac{16}{28}$ 回転,その分だけ後輪が回転します。直径 27インチ(=0.6858 m)のタイヤの周りの長さ $l$ は,$l = 2\pi r$ より,$0.6858 \pi \,\text{m}$ なので,それが $1\dfrac{16}{28}$ 回転して進む距離は,$0.6858 \pi \times 1\dfrac{16}{28} \fallingdotseq 3.386 \,\text{m}$ となります。
一番重いギアのとき同士で,シティサイクルとミニベロの進む距離を調べてみましょう。
…ミニベロの方が一漕ぎで長い距離を進むんですね。
ところで,ギアの作図をしていてもう一つ気づいたことがあるのでご紹介します。
後輪のギアは6段あって,上のシティサイクルの場合は最も重いものが14歯,最も軽いものが28歯です。
後輪のギアは6段あって,上のシティサイクルの場合は最も重いものが14歯,最も軽いものが28歯です。
この14歯のギアと28歯のギア,直径の比が歯数の比と同じ1:2になるかと思ったのですが,そうではありませんでした。
ギアはチェーンによって回転しますね。
わかりやすくするため,チェーンをギア全体に噛ませてみました。
ギアはチェーンによって回転しますね。
わかりやすくするため,チェーンをギア全体に噛ませてみました。
つまり,チェーンの間隔を一辺とした正多角形に外接する円の直径が,ギアの直径ということになります。
つまり,チェーンの間隔を一辺とした正多角形に外接する円の直径が,ギアの直径ということになります。
14歯のギアから見ていきましょう。
正14角形の1辺を底辺とする二等辺三角形。斜辺はギアの半径 $r$,中心角は $\dfrac{360}{14} ^{\circ}$ です。これを垂線で2等分して直角三角形で考えます。
底辺の半分の長さ(図のピンク色の部分)は,三角関数を使って $r \sin\dfrac{360}{28}^{\circ}$ と表せます。
28歯のギアの半径を $R$ とすれば,同じようにして $R \sin\dfrac{360}{56}^{\circ}$ が得られます。
この2つが同じ大きさなので,$R$ は,$r$ を使って次のように表せます。
$$ \begin{align} r \sin\frac{360}{28}^{\circ} &= R \sin\dfrac{360}{56}^{\circ}\\ R &= \frac{ \sin\frac{360}{28} ^{\circ} }{ \sin\frac{360}{56} ^{\circ} } r\\ &\fallingdotseq 1.987 r\\ \end{align} $$
つまり,14歯のギアと28歯のギアの半径(直径)の比は,およそ1:1.987ということになります。
ほかの歯数でも是非計算してみてください。