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日本のことばと数

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和歌を読む

 『万葉集』は,日本で最も古い和歌集であるといわれています。このころは,ひらがなやカタカナがなかったため,すべて漢字で書かれています。『万葉集』にある歌を,1つ紹介しましょう。

若草乃 新手枕乎 巻始而 夜哉将間 二八十一不在国

若草の 新手枕(にいたまくら)を まきそめて

夜をやてむあらなくに

 この歌では,「二八十一」と書いて「にくく(憎く)」と読ませています。かけ算九九の「九九(くく)」と読ませるのに,「八十一」を当てているのです。
当時の人は,このようなかけ算九九を使ったことば遊びを楽しんでいました。


 現在も使われている「四六時中」ということばも,かけ算九九が関係しています。
このことばを辞書で調べてみると,次のように書いてあります。

時刻を表す漢字
干支とは


のことです。

しろく−じちゅう【四六時中】

① 二十四時間中。一日中。二六(にろく)時中。

② 始終。つねに。日夜。

── 広辞苑 第七版

 1日が24時間であり,その「二十四」に,かけ算九九の「四六」のことばを当てています。

 また,「二六(にろく)時中」という説明もあるように,江戸時代は今の「四六時中」の意味を,「二六時中」と表していました。当時,1日の時間が,干支を使っての刻など12の刻に区切られていたことから,「二六(2×6)」で「十二」の刻,つまり1日の時間を表すというわけです。

時刻を表す漢字
干支とは



のことです。

 また,食べ物の名前にもかけ算九九が関係しているものがあります。「二八そば」は,現在は小麦粉2,そば粉8の割合でつくられることから「二八そば」と呼んでいますが,そばの値段が「十六文」だったため,かけ算九九の「二八」を当てて,「二八そば」と呼んだという説があります。

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