円という単純で美しい図形は,数学の歴史の中で,いろいろな役割を果たしてきました。なかでも興味深いのは,円周率です。
円はすべて相似なので,円周と直径との比はどの円でも一定です。
この比の値を円周率といい,π で表します。π はギリシャ語で「円周」を表すπεριφέρεια(ペリフェレイア)の頭文字で,数学者のオイラー(1707〜1783)によって使われました。
π がどんな値になるのか,昔から多くの数学者の興味をひいてきま
した。
古代ギリシャのアルキメデス(前287〜212)は,円の内側と外側に
できる正96角形を考え,辺の長さの関係から円周率 π の値が,
31071<π<317
であることを求めました。これは,2000年も前にしては,おどろくほど正確な値でした。
その後も π の値を求める競争は続き,イギリスのシャンクス(1812〜1882)は,1873年に15年
かかって小数点以下707けたまで計算しましたが,この値は残念なことに528けた目からまちがって
いました。
現在は,スーパーコンピュータを用いて円周率を求めています。2022年6月には,100兆桁まで
求められました。