敷き詰める多角形には,三角形や四角形が多く使われ
ます。三角形や四角形はどのような形でも平面に敷き詰め
られますが,ほかの多角形ではどうでしょうか。
角の数が5つ以上の多角形では,限られた形でしか敷き
詰められないことがわかっています。その中で特によく目にするのは,正六角形の敷き詰めではないでしょうか。
正六角形の敷き詰めは,ハチの巣の形に見られることから「ハニカム構造」(honeycomb structure)とも呼ばれて
います。
この「ハニカム構造」はハチの巣以外にも,カメの甲羅や,昆虫の複眼,柱状節理などに見られます。また,建築
材料や飛行機・新幹線の資材,宇宙望遠鏡の構造などの
人工物にも活用されています。「ハニカム構造」が自然界に現れたり,人工物に活用されたりするのはなぜでしょうか。それは辺の長さと面積の関係に秘密があります。
正六角形の面積は,これと周の長さが同じ正三角形や正方形と比べて,どのようになっている
でしょうか。周の長さを 12 cm とし,次の表を使って調べてみましょう。
正三角形 | 正方形 | 正六角形 | |
---|---|---|---|
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1辺の長さ | |||
面積 |
正三角形 | 正方形 | 正六角形 | |
---|---|---|---|
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1辺の長さ | 4 cm | 3 cm | 2 cm |
面積 | 4√3 cm2 (約 6.9 cm2) | 9 cm2 | 6√3 cm2 (約 10.4 cm2) |
上の表を見ると、1辺の長さが最も短い正六角形の面積が,最も大きくなることが
わかります。
決まった周の長さで図形をつくるとき,最も面積が大きくなる図形は円ですが,敷き詰めができる正多角形では正六角形が最大です。たとえば,部屋をつくるときに壁に使える資材の量が決まっているとしたら,正六角形の部屋をつくると最も広い部屋ができることになります。
ハチができるだけ広い部屋を少ない蜜ロウでつくるなら,
正六角形が最も効率がいいんだね。
また,正六角形の構造は,高い強度を持つこともわかっています。サッカーゴールのネットは,以前は正方形に編んだものが主流でしたが,2000年頃からは六角形に編んだものが増えました。
少ない材料でつくれる壊れにくい形,これらのことから「ハニカム構造」は広く活用されているのでしょう。