方程式を利用して問題を解く場合,「方程式をつくる」という過程が大切です。このことに
ついて,イギリスの数学者であり,物理学者であるニュートン(1642〜 1727)は,『普遍算術』
という書物で,問題を解くには「それをふつうのことばから記号的表現(数学のことば)に翻訳
しなくてはならない」と述べています。この「翻訳」が,方程式をつくることを意味しています。
次の問題はその例です。
商人が,なにがしかのお金を持っていた。そのなかの
100フントのお金を彼は毎年,自分の家族の生活のために
費やし,残金とそれに残金の3分の1のお金を足して,
翌年に回した。3年たって彼は,最初のお金の2倍になったことを知った。最初の年に彼はいくら持っていたか。
たとえば,ふつうのことばで「商人が,なにがしかのお金を持っていた」の部分は,数学のことばに翻訳すると「$x$」とすることができます。
このように,この問題を,ふつうのことばから数学のことばに翻訳して解いてみましょう。
| ふつうのことば | 数学のことば |
|---|---|
| 商人が,なにがしかのお金を持っていた | $x$ |
| 最初の年,100フントを消費したあとの残金 | $x-100$ |
| 残金と残金の3分の1を加えたあとの持ち金 | |
| 翌年,再び100フントを消費したあとの残金 | |
| 残金にその3分の1を加えたあとの持ち金 | |
| 3年目に,100フントを消費したあとの残金 | |
| 残金にその3分の1を加えたあとの持ち金 | |
| 現在の持ち金は最初の2倍 |
| ふつうのことば | 数学のことば |
|---|---|
| 商人が,なにがしかのお金を持っていた | $x$ |
| 最初の年,100フントを消費したあとの残金 | $x-100$ |
| 残金と残金の3分の1を加えたあとの持ち金 | ❶ |
| 翌年,再び100フントを消費したあとの残金 | ❷ |
| 残金にその3分の1を加えたあとの持ち金 | ❸ |
| 3年目に,100フントを消費したあとの残金 | ❹ |
| 残金にその3分の1を加えたあとの持ち金 | ❺ |
| 現在の持ち金は最初の2倍 | ❻ |
❶ $(x-100)+ \dfrac{1}{3} (x−100) = \dfrac{4}{3} x - \dfrac{400}{3}$
❷ $\dfrac{4}{3} x - \dfrac{400}{3} - 100 = \dfrac{4}{3} x - \dfrac{700}{3}$
❸ $\dfrac{4}{3} x - \dfrac{700}{3} + \dfrac{1}{3} \left( \dfrac{4}{3} x - \dfrac{700}{3} \right)$
$ = \dfrac{16}{9} x - \dfrac{2800}{9}$
❺ $\dfrac{16}{9} x - \dfrac{2800}{9} - 100 = \dfrac{16}{9} x - \dfrac{3700}{9}$
❻ $\dfrac{16}{9} x - \dfrac{3700}{9} + \dfrac{1}{3} \left( \dfrac{16}{9} x - \dfrac{3700}{9} \right)$
$ = \dfrac{64}{27} x - \dfrac{14800}{27}$
❼ $\dfrac{64}{27} x - \dfrac{14800}{27} = 2x$
\begin{eqnarray} 64x - 14800 &=& 54x\\ 10x &=& 14800\\ x &=& 1480\\ \end{eqnarray}
最初の年に1480フント持っていた。