数学のなかで,図形の性質を調べる分野を幾何学といいます。
幾何学は今から4000年以上も前に,古代エジプトで土地の測量・
区分けのための技術や知識として誕生し,各地で発達しました。
今から約2300年前には,ギリシャの数学者ユークリッド
(紀元前365〜300ごろ)が,『原論』という世界最古の数学書を
著し,図形の性質についてまとめています。私たちが学んでいる図形の性質の大部分は,この原論のなかに述べられています。
原論は,2000年以上もの間,幾何学の教科書として使用されました。
原論は,次のような「定義」から始まっています。
定義1
点とは部分をもたないものである。
定義2
線とは幅のない長さである。
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こうした定義に続いて,5つの「公準」と9つの「公理」があげられています。公準と公理は,
証明する上での前提となることがらです。初めの3つの公理は,次のようなものです。
公理1
同じものに等しいものは互いに等しい。
公理2
等しいものに等しいものが加えられれば,全体は等しい。
公理3
等しいものから等しいものがひかれれば,残りは等しい。
公理1〜3を,文字を使った式で表すと次のようになります。
公理1
a=b,a=c ならば,b=c
公理2
a=b,c=d ならば,a+c=b+d
公理3
a=b,c=d ならば,a−c=b−d
ユークリッドはこのように,定義や公準,公理を明らかにした上で,これらをもとにして,
次々と図形の性質を証明していきました。証明された性質は450を超え,図形の性質だけでなく,
数の性質にも及んでいます。
ユークリッドは,プトレマイオス1世という王様に「幾何学を学ぶ
近道はないか」と聞かれ,「幾何学に王道なし」と答えたエピソード
が有名だよ。幾何学を学ぶには,地道な努力が必要なんだね。