熱量:カロリー/calorie 熱量:カロリー/calorie

定義:

4.184 J


由来:

水 1 g の温度を 1 上げる熱量

cal と Cal

身のまわりの量を表すとき,単位を省略して表現することがよくあります。例えば,身長 170 センチ(メートル),体重 60 キロ(グラム),車の速度なら 40 キロ(メートル毎時),通信速度なら 4 ギガ(バイト毎秒)。どれも接頭語のみで表現します。

そんな中,接頭語の方を省略して使われることの多い単位が,(キロ)カロリーです。特に,栄養学の分野では,カロリーというと kcal を意味することが長く続いていました。
食べ物のカロリー
1000倍も大きさが違ってしまうので,紛らわしいですね。
食べ物のカロリー


calorie というのは,ラテン語の熱 calor に由来する言葉です。

最初にカロリーという単位を提唱したのは,フランスの物理学者ニコラス・クレマンと言われています。1824年,クレマンは蒸気機関の熱効率を測定するのに便利なように「水 1 kg の温度を 1 ℃ 上げるのに必要な熱量」を Calorie と名付けました。現在より1000倍大きい単位です。


1852年,ファーヴルとジルバーマンが熱化学の研究の中で,calorie を「水 1 g の温度を 1 ℃ 上げるのに必要な熱量」という定義で使用し,化学の分野を中心に広まりました。


しばらくすると,calorieという単位には,クレマンの kg-calorie(キログラムカロリー,大カロリー)とファーヴルらの g-calorie(グラムカロリー,小カロリー)の2種類が混在していることが明らかになりました。

そこで,フランスの化学者マルセラン・ベルテロは,クレマンのカロリーを Calorie ,ファーヴルらのカロリーを calorie と頭を大文字か小文字かで区別することを提唱しました。しかし,カロリー自体が名詞であったためドイツ語ではいずれも大文字書き出しになってしまうという問題が残りました。


その後,kg-calorie を kilocalorie と呼んで区別することが多くなり,科学の分野における cal は g-calorie に統一されていきました。


しかし,1887年にアメリカの化学者アトウォーターが栄養学の本を執筆し,そこで kg-calorie を Calorie として紹介したことで,栄養学においてのカロリーが kg-calorie となってしまいました。

アトウォーターは,食品 100 g を摂取したときに成分ごとのエネルギー値を測定した化学者で,現在でもアトウォーター係数にその名を残しています。日本でもアトウォーターの著書が栄養学の分野で広く読まれたので,2種類のカロリーが混在してしまったのです。


現在,日本では cal は 4.184 J に統一され,栄養学などの分野でのみ使用が認められています。

1 cal ってどのくらい?〜消費
まばたき1回の間に消費されるエネルギーが,およそ 1 cal です。
まばたき
まばたき

 

ヒトは安静にしているときも,生命活動の維持にエネルギーを消費しています。そのエネルギーの大きさは,基礎代謝基準値と体重の積で求まります。家庭科で cal を学習する中学1年生(12歳)の場合,基礎代謝基準値が,男子 31.0 kcal/kg/日,女子 29.6 kcal/kg/日で,平均体重が,男子 44.0 kg,女子 43.6 kg です(平成29年度)。

ヒトのまばたきに要する時間を 0.1 秒とすると,まばたき1回の間に消費されるエネルギー $Q$ は,次のように求められます。

$$ \begin{align} Q_b &= \text{基礎代謝基準値(12歳男子)} \times \text{平均体重(12歳男子)} \times \text{まばたきの時間}\\ &= 31.0 \,\text{kcal/kg/日} \times 44.0 \,\text{kg} \times 0.1 \,\text{s}\\ &= 31.0 \times 10^3 \,\text{cal/kg/日} \times 44.0 \,\text{kg} \times \frac{ 0.1 }{ 60 \times 60 \times 24 } \,\text{日}\\ &= 1.58 \,\text{cal}\\ \end{align} $$ $$ \begin{align} Q_g &= \text{基礎代謝基準値(12歳女子)} \times \text{平均体重(12歳女子)} \times \text{まばたきの時間}\\ &= 29.6 \,\text{kcal/kg/日} \times 43.6 \,\text{kg} \times 0.1 \,\text{s}\\ &= 29.6 \times 10^3 \,\text{cal/kg/日} \times 43.6 \,\text{kg} \times \frac{ 0.1 }{ 60 \times 60 \times 24 } \,\text{日}\\ &= 1.49 \,\text{cal}\\ \end{align} $$
1 cal ってどのくらい?〜摂取

日本食品標準成分表から,食品で 1 cal になりそうな事例を探してみましょう。


ごはん
まず,ごはんならどのくらいでしょうか。











ごはん

食品成分表によると精白米のごはんは 100 g あたり 168 kcal です。また,米穀安定供給確保支援機構のウェブサイトによると,茶碗1杯のごはん 150 g は,3250粒くらいだそうです。

よって,ごはん1粒から摂取されるエネルギー $Q_r$ は,次のように求められます。

$$ \begin{align} Q_r &= \text{ごはん 100 g のエネルギー} \div \text{ごはん 100 g の粒数}\\ &= 168 \times 10^3 \,\text{cal/100 g} \div ( 3250 \times \frac{100}{150} \,\text{/100 g})\\ &= 77.5 \,\text{cal}\\ \end{align} $$

……78分の1粒で 1 cal。実感がわきませんね。


では,もっとカロリーが低そうなもの…… えのきはどうでしょう。

えのき茸







えのきたけは,生でも茹でても 100 g あたり 22 kcal です。えのきたけを 100 g はかりとり,何本あるか数えてみました。

えのき茸

えのきの本数

大小いろいろな長さのえのきたけのうち,3 cm 未満のものを除いて数えると 470 本ありました。よって,えのきたけ1本から摂取されるエネルギー $Q_e$ は,次のように求められます。

$$ \begin{align} Q_e &= \text{えのき 100 g のエネルギー} \div \text{えのき 100 g の本数}\\ &= 22 \times 10^3 \,\text{cal/100 g} \div 470 \,\text{/100 g}\\ &= 46.8 \,\text{cal}\\ \end{align} $$

……47分の1本で 1 cal。イメージしづらいですね。


しらたき

もっとカロリーの低いもの…… 最後にしらたきを調べてみましょう。

しらたき





しらたきは 100 g あたり 6 kcal です。しらたきの直径を 2 mm とすると 長さ 1 cm のしらたきから摂取されるエネルギー $Q_s$ は,次のように求められます。なお,しらたきは水分が 96.5% なので,密度は 1 g/cm$^3$ で計算しました。

$$ \begin{align} Q_s &= \text{しらたき 100 g のエネルギー} \div 100 \times \text{しらたき 1 cm の質量} \\ &= 6 \times 10^3 \,\text{cal/100 g} \div 100 \times \pi \times (0.1 \,\text{cm})^2 \times 1 \,\text{cm} \times 1 \,\text{g/cm}^3\\ &= 1.9 \,\text{cal}\\ \end{align} $$

1 cm が 1.9 cal。つまり,長さ約 5 mm のしらたきが,1 cal です。

単位の換算
空欄に数値入力することで、単位を換算することができます。
$\text{ cal}$ = $\text{ J}$