振動数・周波数:ヘルツ/herts/SI組立 振動数・周波数:ヘルツ/herts/SI組立

定義:

1 s あたりの振動の回数


SI基本単位による表記:

s$^{-1}$

ハインリヒ・ヘルツ

振動数の単位ヘルツは,ドイツの物理学者ハインリヒ・ヘルツ(1857年〜1894年)にちなんでつけられました。

ハインリヒ・ヘルツ


ヘルツは,1888年,マクスウェルが予言した電磁波の存在を証明したことで知られています。彼の発見によって電磁波が空間を伝わることが明らかになり,無線通信などの開発につながりました。

しかし,彼自身はその発見の価値に気づかず,
「偉大なるマクスウェル師匠が正しかったことを証明しただけの,何の役にも立たない実験」
と語っています。
そして,彼の発見による通信技術の発達を見ることなく,多発血管炎性肉芽腫症という難病により36歳の若さで亡くなりました。

ハインリヒ・ヘルツ
電源の周波数

コンセントから供給される電流は交流です。

コンセント


乾電池などから得られる直流は+極から−極の向きに流れますが,交流は,電流の流れる向きが周期的に入れ替わります。この向きの変化が,1秒間に何回起こるかを表すのが周波数です。

コンセント
直流と交流 直流と交流

日本では,静岡県の富士川と新潟県の糸魚川あたりを境にして,西日本は 60 Hz,東日本は 50 Hz の周波数の交流が使われています。

記録タイマー

中学校理科で物体の運動を調べるときに,記録タイマーを使います。

記録タイマー

記録タイマーは,電流の向きに合わせて点を打つ動作のオン・オフをするように作られています。そのため,東日本で使用した場合は1秒間に50個,西日本で使用した場合は1秒間に60個の点を打ちます。

記録タイマーの結果から速さを求めるときに,東日本では5打点が,西日本では6打点が 0.1 s に当たりますから注意が必要です。

光の周波数

ヒトの目で見える光(可視光)の範囲は,380〜750 nm などのように波長(波一つ分の長さ。量記号λ)を使って表されます。

光の速さは一定($c$ = 2.9979×10$^8$ m/s)なので,これを周波数で表すこともできます。

光のスペクトル


例えば,500 nm の緑の光を周波数νで表すと次のようになります。

$$ \begin{align} \nu &= \frac{c}{\lambda} = \frac{2.9979 \times 10^8 \,\text{m/s}}{500 \,\text{nm}}\\ &= \frac{2.9979×10^8 \,\text{m/s}}{500×10^{-9} \text{m}}\\ &= 6.00 \times 10^{14} \text{/s}\\ &= 600 \,\text{THz}\\ \end{align} $$
CPUの周波数

コンピュータの中央処理装置(Central Processing Unit)の性能の指標の一つに,クロック周波数があります。

CPU


コンピュータの内部では,2進数による処理が行われています。

0をオフ,1をオンとして,電気信号によって1単位の情報が処理されます。この処理速度,つまりオン・オフの切り替え速度がクロック周波数です。

例えば,3.80 GHz のCPUの場合,1秒間に38億回の処理ができることになります。

CPU
音の振動数

中学校理科の教科書には,
「1秒間に音源が振動する回数を振動数(または周波数)という」
とあります。

この音源が振動する回数の違いを,わたしたちは音の高さの違いとして感じます。


音楽においては,ピアノの鍵盤の真ん中あたりにあるド(日本語式:一点ハ/ドイツ語式:c$^1$)のすぐ上のラ(一点イ/a$^1$)が 440 Hz(国際基準)と決められています。

1オクターブ上がるごとに振動数は2倍になっていきます。880 Hz は高いラ(二点イ/a$^2$)として聞こえ,1760 Hz ならさらに高いラ(三点イ/a$^3$)に聞こえます。

ラの振動数 ラの振動数
ヒトの聴覚

ヒトが聞き取れる音の範囲は,20 Hz 〜 20,000 Hz です。範囲には個人差があり,歳をとるにつれて高音域が聞き取りにくくなります。

自分がどこまで聞こえるか気になった方は,以下を再生してみてください。なお,私は 12,000 Hz が上限でした。



1 Hz ってどのくらい?〜音

ピアノの一番下のド(下一点は/C$_1$)の5オクターブ下のド(下六点は/C$_6$)が約 1 Hz です。

1オクターブには,ピアノの白鍵,黒鍵合わせて12の音があります。1オクターブ上がると2倍になるので,1音上がるときを r 倍とすると,次のような関係になります。

音階の周波数 音階の周波数

r$^{12}$ = 2 よって,r = 2$^{\frac{1}{12}}$ とわかります。

C$_6$ は,A$_2$(440÷2$^4$=27.5 Hz)の3音上のド(C$_1$)の5オクターブ下なので,振動数 $f$ は次のように求められます。

$$ \begin{align} f &= 27.5 \times 2^{\frac{3}{12}} \div 2^5\\ &= 1.022 \,\text{Hz}\\ \end{align} $$

実際にどんな音か気になった方は,以下を再生してみてください。


ヒトが聴き取れる低音は 20 Hz が下限と言われていますが,聞こえた方はいますか?

1 Hzってどのくらい?〜テンポ

1 Hz の音は,なかなか感じることのできない低音でした。そこで,1秒間あたりの回数ということで,例を考えてみました。

音楽で学習する 君が代 のテンポが,およそ 1 Hz です。

音楽の教科書には君が代が載っています。楽譜の左上にある「♩=69」がテンポを表しています。これは,1分間に四分音符が69回というメトロノームの速さを意味しています。これを Hz に換算すると,次のようになります。

$$ \begin{align} f &= 69 \,\text{/min} = \frac{69}{60} \,\text{/s}\\ &= 1.15 \,\text{Hz}\\ \end{align} $$