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その1 地球内部の第2の海 |
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地球は水惑星とよばれています。地球表面の7割近くが平均的深さ数千メートルの海でおおわれているため,他の惑星とは異なる表層環境が実現し,生命誕生の原因となったと考えられてきました。ところが最近では,この海以外に地球内部にはさらに多量の水が存在するかもしれないと考えられるようになっています。
今から数百年前にフランスのジュール・ヴェルヌが書いた地底旅行という空想科学小説の中では,地底深くに巨大な空間があって,満々と水をたたえた巨大な海があることになっていますが,今考えられているのは,このような巨大な水溜まりではありません。固い鉱物の中にとじ込められた水のことなのです。 |
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その2 巨大な貯水槽は高圧鉱物 |
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地球の表面数キロから数十キロの深さは地殻とよばれ,花崗岩や玄武岩などの火成岩やさまざまな堆積岩とその変成岩でできていますが,その下の2,900kmの深さまでの部分は,かんらん岩の化学組成をもつ岩石でできています。このかんらん岩の60%はペリドートとよばれる宝石の一種のかんらん石という鉱物で占められています(図1)。
かんらん石は400kmの深さに相当する圧力になると化学組成はまったく同じままで,原子の配列が違う,ワズレアイトやリングウッダイトとよばれる別の鉱物に変化します。このような鉱物は地下400kmから670kmの範囲に存在していて,この部分はマントル遷移層と呼ばれます(図2)。最近の研究によって,かんらん石は水を含まないのに対して,この高圧で安定なワズレアイトやリングウッダイトは最大3%の水を含むことができることが分かってきました。もし,この部分が3%の水を含んでいるとするとこのマントル遷移層全体では地球表面の海水の約6倍の質量の水を蓄えていることになります。実際にどの程度の量の水が含まれているのかは,地球内部の対流の速さなどに関連して重要な研究テーマなので,多くの研究者がさまざまな研究をおこなっています。地震の波や電磁気などを使った予備的観測では,このマントル遷移層に水の量は1%以上あるとする結果が得られています。そうすると地球内部には最低でも海水の2倍の貯水槽があることになります。この深さまでボーリングによって穴をあけることが出来ればすぐに結論が出るのですが,何しろ,人類はこれまでで最高で15kmの深さの穴しか掘ったことがありません。別の手段で,地底の水の量を推定するしか方法がなさそうです。皆さんの中から,この問題にチャレンジする人が出てくれませんか。
解説:ワズレアイトは地球内部の約400-500kmの深さで安定,リングウッダイトは約500-670kmの深さで安定な鉱物。それぞれの化学組成は400km以浅の深さで安定なかんらん石と全く同じで,Mg1.8Fe0.2SiO4で表される。 |
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東京大学地震研究所教授 藤井敏嗣(理学博士) |
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