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Vol.5 生命と光合成の起源
   その1  生命の起源      
   
 以前は、地球上の生命は浅い海の中で生じたいのではないかと考えられていました。しかし、最近の研究によると、実は、深い海の底にある地中から熱水を噴出している熱水噴出口のようなところで、最初の生命が誕生したのではないかという説が有力になっています。現在の深海の熱水噴出口では、シロウリガイやハオリムシといった変わった生物が、化学合成細菌という微生物と共生することによって小さな生態系を形づくっています。深海には太陽の光は届きませんが、この化学合成細菌は、地中から吹き出す熱水の中に含まれる硫化水素や水素を利用して生きていく上で必要なエネルギーをまかなうことができます。地球上の生物は、植物のように直接的に太陽の光のエネルギーを利用するか、もしくは動物のように、他の生物を食べることによって、間接的に光エネルギーを利用しているものがほとんどなのですが、この深海の生態系だけは例外です。まだ、光合成というものが出現する前の地球の生命も、現在の深海の熱水噴出口の周りの生態系のようなものだったのでしょう。
 

図1 深海の熱水噴出口
ハカセ
 
       
   その2  光合成の起源      
   
 深海には光が届きませんから、光合成をする生物はいないと思うのが常識です。ところが、最近、深海の熱水噴出口の周りで、αプロテオバクテリアの仲間だと思われる生物が見つかり、Citromicrobium bathyomarinumという学名が付けられました。αプロテオバクテリアはミトコンドリアの起源となった細菌などを含む細菌の仲間で、光合成細菌の多くもこれに含まれます。光合成細菌はクロロフィル(葉緑素)と似ていて赤外線を吸収するバクテリオクロロフィルという色素を使って光合成をする生物ですが、このCitromicrobiumも、バクテリオクロロフィルaと思われる色素を持っていました。しかし、光がなければ色素を持っていてもしょうがないはずですが、何か理由があるのでしょうか?今考えられているのは、温められた物質が放射する赤外線です。熱水噴出口近くの温度は400℃にも達しますから、あたりには、弱いながらも赤外線が放射されているはずです。この赤外線自体は、広い範囲の波長の光を含みますが、水自体に赤外線を吸収する性質があるため、その部分の波長が削られて周囲には800〜950 nmと1,000〜1,050 nmの2箇所にピークを持つ赤外線が放射されることになります。これはちょうどバクテリオクロロフィルaという色素とバクテリオクロロフィルbという色素が生体内で大きな吸収を持つ波長領域とだいたい一致するのです。この光合成細菌が、その弱い赤外線だけをエネルギー源にしているかどうかよくわかっていませんが、赤外線を遠くから感知することによって、もしかしたら、あまり近づきすぎてゆだってしまわないようにするためのセンサーとして色素を使っている可能性もあります。元々は、このようにセンサーとして使われていた色素が、やがて光合成色素に使われるように進化した可能性もあるでしょう。生物の起源だけではなく、光合成の起源も深海にあるのかも知れません。
 
熱水噴出口の生物に関する情報「熱水生物群集の成り立ち」
http://www.photosynthesis.jp/nessui.html
 
光合成一般に関しての情報「光合成の森」
http://www.photosynthesis.jp/
 
図2 光合成色素の吸収スペクトル
図2 光合成色素の吸収スペクトル
リカりゃん
 
   
早稲田大学教授 園池公毅(理学博士)
 

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