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Vol.4 ポケットの中のアインシュタイン
   その1  相対性理論      
   
 皆さんは相対性理論という名前を聞いた事がありますか。これは、皆さんが高校で習うニュートンの運動法則に代わるものとして、約100年前にアインシュタインという物理学者が考えた理論で、今ではその正しさが様々な実験で確かめられています。
 相対性理論は「運動している時計は遅れて見える」「運動している物体の長さは縮んで見える」など、私たちの常識とは異なる驚くべき内容を含んでいます。しかし、物体の速度が光速より十分遅い場合には、ニュートンの運動法則が高い精度で成り立つことが知られているので、相対性理論を知らなくても、自動車は走るし飛行機も飛ぶ。私たちの日常生活で、相対性理論が必須な場面はほとんどありません。
  リカちゃん  
       
   その2  GPSとは      
   
 ところが、皆さんが良く知っている道具で、相対性理論を取り入れないと全く使い物にならないものがあるのです。何だと思いますか。
 それは、カーナビや、一部の携帯電話に組み込まれているGPS注) という道具です。
 GPSは、GPS衛星という人工衛星が出す電波を受信して、自分がいる位置を知る装置です。衛星には非常に正確な時計が積んであり、規則正しく電波信号を出しています。受信機で衛星からの信号を受信し、その信号が衛星を出てからどれだけの時間かかって到達したかを解析すれば(光速は良く知られているので)その衛星と受信機の距離がわかりま す。複数の衛星からの信号を同時に受信できれば、位置を決定できるのです。
 位置を計算するためには、衛星の位置と、信号を出した時刻を正確に知ることが必須です。ところが、衛星は高度20000kmの上空を時速約14000kmという高速で飛んでいるため、相対性理論が予言する効果により、衛星の時計が地上の時計に対して狂って見えるのです。狂い方は数十年で1秒と、とても小さいのですが、電波は1秒で30万kmも進むので、相対性理論を知らないでGPSを作ったとすると、1時間で500m以上も位置がずれてしまうのです。
 GPS機能付き携帯電話にはアインシュタインの知恵が生きているんですね。
 
注)「Global Positioning System」の略
 
  図1.GPSの電波灯台
図1.GPSの電波灯台
図2.GPSの原理
  図2.GPSの原理
 
   
東京大学教授 早野 龍五(理学博士)
 

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