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その1 日常生活のなかの結び目 |
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日常生活のなかで、「ひも」を「結ぶ」ということは意外なほど多く経験する。実用的なものでは、物をくくる、他のものにつなぐ、などである。また、装飾用として、リボン、ネクタイ、水引(図1)など、生活を豊かにするものが数多くある。会社のロゴマークとして使用される例もよく見られる。
私たちの住んでいる3次元空間に、両端を結んだひもがあるとしよう。自分自身とは交わらない、すなわち、空間内の同じ点を一度だけしか通らない1本の閉じたひもを「結び目」という。ひもがとる配置はさまざまであり(図2)、それらの性質を調べるのが結び目理論とよばれる数学である。とくに、結び目の違いを識別し分類することは、最も基本的な問題である。簡単なことのようだが、そうではない。たとえば、図3の左と右はまったく異なる結び目のように見える。しかし、一方から一方へ、ひもを切らずに連続的に変形できるのである。実際に、ひもを使って調べてみると楽しい。 |
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図1. 水引(みずひき) (あわじ結びの例) |
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その2 結び目から自然科学へ |
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「ひもを切らずに連続的に変形できる」と書いたが、これがまさにトポロジー(位相幾何学)とよばれる数学の大前提である。ひもを使った手品を見ていて私たちが驚くのは、手品師が一見この大前提を破るようなことをやってみせるからである。もちろん、それがトリックで、手品師だけが特別にひもの数学から自由であるわけではない。
物理、化学、生物において、ひもとみなせるものには、磁力線、高分子、DNAなどがある。図4は環状DNAの電子顕微鏡写真である。多くの細菌やウィルスは環状DNAをもっている。DNAトポイソメラーゼとよばれる一群の酵素は、DNA鎖を切断、交差、再結合する働きをもち、その操作によって実験的に結び目をつくることができる。こうして作成された結び目から、逆に、水中での環状DNAの形状や、切断され再結合された部位の情報を得ることができる。このようにまったく異なる自然科学の各分野には意外な結びつきがあり、予期せぬ発展につながっていくのである。だから、理科は楽しい。 |
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図4. 環状DNA |
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東京理科大学教授 和達 三樹(理学博士) |
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