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その1 化学の新しい潮流 |
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高分子(化学 I )とよく似ているようだが,“超”分子だけに何かすごそう。名付け親は1987年にノーベル化学賞を受賞したレーン(J.-M. Lehn) ★ という化学者だ。
分子量がせいぜい1000ぐらいまでの小さな分子が,共有結合以外の分子間相互作用(まとめて非共有結合性相互作用とよぶ)でひとまとまりに集まった集団(分子集合体)のことをいう。
分子が集団になると,個々の分子にはなかった性質が現れる。例えば,液体の流動性と結晶がもつ分子配列の秩序性を合わせ持つ,液晶という状態を作る化合物群は典型的な例だろう。
液晶状態では,電場のON-OFFで分子の配列方向が変わり,それに応じて偏光の透過性も変わる。この性質がテレビなどのディスプレイに応用されている。
液晶状態は物質の状態の一つなので,超分子ではないという見方もあるが,優れた性能が分子間の非共有結合性相互作用に基づいていることから超分子といってよい。
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図1. 液晶ディスプレイの原理図
(シャープ株式会社 提供) |
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その2 いろいろな超分子 |
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非共有結合性相互作用には,いろいろな種類がある。例えば,水になじみにくい基が水から疎外される作用は疎水性相互作用とよばれるが,ミセル(化学 I )や脂質膜(化学 II )といった超分子は,この作用でできる。
水素結合(化学 II )も非共有結合性相互作用の一つ。だからDNA(化学 II )の二重らせん(化学 II )も超分子ということになるが,それぞれのDNA鎖は高分子なので超高分子という方がいいかも知れない。
このような化学的作用の他,鎖のように分子をつないだり(カテナン),棒に輪を通すようにつないだり(ロタキサン)する物理的作用も利用できる。いくつかの作用を組み合わせてもいい。
分子の集め方を変えれば,できる超分子の性質も変わる。おもしろい性質が見つかれば,液晶に次ぐ巨大市場を開拓できる可能性があるから魅力的だ。 |
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その3 超分子とソフトマテリアル |
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私たちは,数個のロイシンでできたペプチド基を両親媒性分子(化学 II )に組み込んでみた。両親媒性分子とは,カルボキシ基などのように水に溶けやすい官能基と油に溶けやすい官能基を合わせ持った分子を指す。この分子をクロロホルムに溶かし,クッキングシートの上で乾かすと,透明なフィルムになった。しかも,このフィルムは高分子できたフィルムのように自由に曲げることができ,共有結合を使わずに高分子と同じ性質を得た世界で初めての例になった(図2)。
水素結合でできたβ-シート(化学 II )のロイシン側鎖が,ファスナーのように噛み合ってフィルムの強度を高めているのだと考えている。実は,ロイシンでできたペプチド基を両親媒性分子に組み込めば,この構造ができることを予想していた。このように,自分の好きなように分子を設計し,実際に合成できるところが有機合成化学の醍醐味なのである。ところで,何に使えるだろう?
一般に超分子は,高分子でできたプラスチックと比べれば軟らかい。金属結合でできた金属やイオン結合でできた塩類と比べてももちろん軟らかい。そこで,柔らかいという性質面から定義されたソフトマテリアル(ソフトマター)の多くは,超分子である。両者は近縁とみてよい。 |
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図2. オリゴロイシン基を含む分子集合構造の模式図 |
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千葉大学教育学部教授 山田 哲弘(工学博士) |
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